フットゴルフワールドカップ ~その10~

パシフィックトロフィー④

700マガジン

フットゴルフワールドカップ ~その10~

2022年5月

 

1,000を超えるコースでフットゴルフがプレーできるというフットゴルフの本場アメリカで日本とアメリカ、それぞれの国から選ばれた精鋭たちが相まみえました。

 

「フットゴルフパシフィックトロフィー」

 

パシフィックトロフィーは、2016年に第1回大会が実施された日本とアメリカ、それぞれの代表選手たちによるフットゴルフ対決の場であり、今回が2度目の開催です。

この戦いのために2021年8月から2022年3月までのジャパンツアーの通算獲得ポイントから日本代表選手が選出されました。

栄光の日本代表14名をご紹介します。

 

一般:

小林 隼人選手

鈴木 秀成選手

三窪 秀太選手

川添 祐介選手

水谷 唯人選手

大塚 高雅選手

山縣 祐人選手

桑田 寛之選手

 

シニア:

栗原 祐二選手

根元 央希選手

工藤 誠司選手

大塚有尋選手

 

女子:

三浦 尚子選手

山下 えりい選手

(ジャパンツアー 2021-22 supported by SHIELDS ポイントランク順)

日本代表メンバー

前列左より

三窪秀太選手、根元央希選手、川添祐介選手、鈴木秀成選手、小林隼人選手、桑田寛之選手、三浦尚子選手

後列左より

大塚有尋選手、山縣祐人選手、山下えりい選手、水谷唯人選手、大塚高雅選手、栗原祐二選手、工藤誠司選手

 

日本フットゴルフ界にとっては新型コロナウィルスがまん延する前の2019年秋のアジアカップ以来の久々の日本代表での戦いとなります。

 

第1回のパシフィックトロフィーから実に6年の月日が流れました。

その間、日本フットゴルフ界も選手の皆さんも大きく飛躍を遂げました。

2016年といえば日本国内ではフットゴルフがプレーできるゴルフ場はまだ数か所しかなく、プレー環境がままならない中で日本にとっての初めてのワールドカップアルゼンチン大会に臨んだ年でした。

そのアルゼンチン大会において国別の団体戦で優勝したのがアメリカでした。

当時すでに世界のトップに君臨していたアメリカ。

最初に触れたように国内で1,000を超えるゴルフコースでフットゴルフがプレーできる環境を誇る名実ともにフットゴルフ王国です。

前回第1回のパシフィックトロフィーは日本、アメリカ双方16名の個人のスコアより勝敗を決める(一般の上位4人、女子上位2人、シニア上位2人の合計スコアで勝敗を決める)形を取り、日本チームは大きな差を付けられての敗戦となりました。

 

第2回パシフィックトロフィーの舞台はフロリダ州レイク・ブエナビスタのディズニーズ・パーム・ゴルフコース

今回は1ホール毎のスコアで勝敗を決めるマッチプレー方式の戦いをシングル(個人戦)、フォーサム(2人1組で1つのボールを交互に蹴ってスコアを競い合う)、フォーボール(各チーム2名がそれぞれ自分のボールでラウンドし、良い方のスコアで勝敗を決める)の3種類の形で行いました。

国と国との対決、チーム形式の団体戦。

日本選手にとってこの戦いはパシフィックトロフィーだけではなく、過去の苦い経験を払拭する雪辱戦の意味合いも込められていました。

2018年アジアカップ決勝、2018年ワールドカップモロッコ大会初戦の対スロバキア戦、2019年アジアカップ決勝・・・

惜しいところで勝利を逃してきた団体戦。

勝利への思いは非常に大きなものがありました。

そのために渡米前には栃木県さくら市での日本代表合宿、群馬県鳳凰ゴルフクラブでの壮行試合により本番を想定したラウンドや選手間のコミュニケーションを重ねて勝つための準備を行いました。

栃木県さくら市で行われた日本代表合宿より

合宿期間中には市内の小学校において選手が講師になりフットゴルフ体験授業が行われた

鳳凰ゴルフ倶楽部において行われた壮行試合より

相手は仲間でありよきライバルであるジャパンツアーに参加している選手の皆さんが務めた

 

この渡米前の合宿、強化試合について鈴木秀成選手はこのように語ります。

「出発1ヶ月前のセブンハンドレッドでの合宿、出発直前の鳳凰ゴルフ倶楽部でのマッチゲームなどこれまでにない程、準備段階から沢山の時間を代表メンバーと共に過ごす事が出来ました。日頃月1回程度ゴルフ場で顔を合わす仲ではありながらも、個々のパーソナリティやフットゴルフに対する想い、考えを知るには至りませんでした。セブンハンドレッドで実施させて頂いた合宿では座学のワークでもその辺りに踏み込む事が出来たのでリレーションが高まったのではないかと思います。この辺りは代表経験豊富で長らく一緒に代表でプレーしてきた桑田選手からもアイデアを貰ったり、ワークを準備してくれたので感謝です。」

2015年の史上初のフットゴルフ日本代表 “オリジナル6” の一人であり長年日本フットゴルフ界の先頭を走り続ける鈴木選手。

幻となってしまった2020年ワールドカップ日本大会の際にも事前に強化合宿を実現し、日本代表の強化や団結のために奔走しました。

日本フットゴルフ協会強化部の強化部長という役割を担っていることもあり、人一倍「代表」、「チーム」に対しての思いが強い鈴木選手の思いはきっと全ての代表選手に届き、ひとつになってアメリカに挑んだことでしょう。

 

現地時間5月26日朝7時過ぎ。

きれいな朝の青空の下、戦いは始まりました。

パシフィックトロフィーの貴重な映像です。ぜひご覧ください!!

撮影:一般社団法人日本フットゴルフ協会

 

果たして結果は。

 

9つの対決の結果、7対2で日本代表が勝利を収めました。

 

見事に雪辱を果たし、念願のチーム戦勝利を収めた日本代表。

 

まずは彼に話を聞かないわけにはいきません。

日本におけるフットゴルフの生みの親と言っても過言ではない存在。

松浦新平 日本フットゴルフ協会会長にお話を伺いました。

「元々は(2016年)アルゼンチンW杯で(団体戦において)優勝したアメリカの強さに対して、追いつけ追い越せを目標に企画した大会でした。

初回はやはり完敗でしたが、今回は相手がメンバーを落としてきたとはいえ、勝てた事は大変自信になりました。」

誰よりもフットゴルフを愛し、選手たちを愛する松浦会長。

パシフィックトロフィーもそんな思いが共感を呼び生み出された大会だったのです。

6年の歳月を経て選手の皆さんの成長を身をもって感じ、勝利の瞬間を迎えた時の感動は何事にも代えがたいものだったことでしょう。

 

そして彼らにも。

 

2022年日本代表14名のうち、前回2016年大会を経験した選手が3名います。

恐らく見える景色も、臨む心構えも当時とは全く異なる中で迎えた今回のパシフィックトロフィーは彼らにとってどんな大会となったのか。

3名の選手の皆さんに話を伺いました。

 

「第1回パシフィック・トロフィーでは、アメリカ西部のゴルフ天国、パームスプリングの名門『デザート・ウィロー・ゴルフ・リゾート』が使用されましたが、今回もゴルフ・リゾートとして名高いフロリダ州オーランドで開催されました。気候は大きく異なるものの、コースを取り巻く環境はとても素晴らしく、アメリカにおいてフットゴルフというスポーツが確実な地位を築いていると改めて感じました。

チームUSAは全米から約50名のトップレベルのフットゴルファーを選考し、USオープンを挟んで開催されたパシフィック・トロフィーと、米英対抗戦であるJANSEN CUPに臨んでいました。前回大会以降に力をつけてきた多くの選手が含まれるメンバーは、アメリカの層の厚さを証明していました。6年前は、私にとって初めての海外でのラウンドでしたが、今回は4度目のオーランドでのプレーであり、宿泊や車での移動もスムースでストレスなく大会を迎えることができました。

対戦の結果、日本チームは素晴らしい成績を残します。アメリカ選手から温かい勝利への賛辞とともに「日本チームはしっかり準備をしてきた。自分たちは油断し、準備が足りなかった。」との言葉が聞かれました。十分な準備とともに大会に臨めたことが、日本チームの勝利の大きな要因の一つであったことは間違いないと思います。」(大塚有尋選手/2018年ワールドカップ出場)

 

「今回のアメリカ代表は前回と比べかなりメンバーを落としてきましたが、相手はどうあれ簡単な試合など一つもありませんでした。この勝利はこれまで大事な試合で競り負けてきた日本にとって、大きな一歩と感じました!」(小林隼人選手/2018年ワールドカップ出場)

 

「16年惨敗の悔しさを思い出し、パシフィックの悔しさはパシフィックでしか返せないと思っていました。16年パシフィックからの間で確実に成長はしていたし、22年はリベンジを果たせる!と強い思いがありました。」(山縣祐人選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

 

長く、平坦なコース。繊細なキックが求められる芝目の短いフェアウェイやバンカーの淵の傾斜のある場所に作られたカップ。日本ではなかなか経験できないそんな難易度の高いコースをものともしないアメリカ選手のパワーやテクニック。2016年も、そして今回もそんな中での戦いだったことでしょう。

3人のコメントにもあるように6年という歳月の中で日本選手は経験を積み、技術的にも精神的にも成長を遂げました。両国の力の差は確実に縮まってきています。

それは選手の皆さんの努力はもちろん、日本フットゴルフ界の進化も関わっていたことでしょう。

選手の皆さんにお話を聞きました。

 

「初の代表戦と言う事で代表に入れた安心感とやってやると言う気持ちでいました。

アメリカでの戦いは程よい緊張感の中、日本のオープニングのキッカーとしてフォーサムスタートし、相手がどうこうよりも、自分プレーをする事とペアの鈴木秀成選手とのコミュニケーションが勝利へのカギになるかな、と思っていました。

常に話しながらラウンドしていく中思い通りに試合を運ぶことができ早い段階で勝利が決まり、ホッとしたのを思い出します。あの勝利はペアの鈴木秀成選手がいたからこそ勝てた試合でした。いろいろ助けられました。」(川添祐介選手/2022年パシフィックトロフィー代表)

 

「実に3年ぶりとなる国際大会での団体戦ということ、また強豪国のアメリカと試合出来るという事にワクワクしていました。

試合当日の気持ちとしてはこの試合に向けて準備してきた事を自信を持ってぶつければOK、という気持ちで臨みました。国際大会初出場の選手も今回いる中でしたが、誰1人として浮き足立つ事なく振る舞ったので望んだ結果を得られたのではないかと思います。来年のW杯に向けた前哨戦として貴重な経験が出来たことに感謝しております。」(鈴木秀成選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

 

「久しぶりの世界の舞台で興奮して眠れませんでした。

それは自分にとってはいいことで、日本での大会以上に集中力がまし、その中でも落ち着いた判断ができいい結果、プレーに繋がりました!」(桑田寛之選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

 

「パシフィックトロフィーまでの準備期間はteamで多くの時間を共有し、不安や迷いなく自身をもってアメリカに挑めました。結果勝利できたのは準備期間でのteam活動は大きく寄与したと考えます。

リベンジできたことは非常にうれしかったし、team Japanで戦えたことを誇りに思います。」

(山縣祐人選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

 

「日の丸をつけて日本代表として戦う時間はやはり最高でした!そもそも日本代表になりたくてフットゴルフをはじめたので、久々にその感覚を味わえて良かったです。」(小林隼人選手)

 

「まず、また海外でフットゴルフできるということが感慨深く、当たり前ではないということを再認識しました。

レースを勝ち抜き選考して頂いたので、 他のフットゴルファーに対しても、準備期間で協力頂いたあらゆる関係者の方々に必ず勝利を報告するという使命を胸に闘いました。」

(大塚高雅選手/2019年アジアカップ代表)

 

「ワールドカップ2023にて、日本が団体戦で優勝する為には、必ず勝たないといけない相手であり、今の日本の力を試すのに絶好の機会だと思ってパシフィックトロフィーに臨みました。

私自身はシングルに出場し敗戦してしまいましたが、チームとしては皆さんのお陰で勝利することが出来、日本は油断出来ない相手だと思わせることが出来たのではないかと思います。」(三窪秀太選手/2018年ワールドカップ出場)

 

「まず絶対に日本代表になる、パシフィックトロフィーに出場すると決めて、経験がない分必死に努力したことで出場する権利を得られたことを誇りに思う。ラウンドでは海外選手の勝負強さを感じた。リードされた時や、大事な場面での集中力がすごかった。

シングルスで負けてしまった事が悔しいが、日本チームが勝ったことは今後の日本のフットゴルフの発展に繋がると思う。」(水谷唯人選手/2022年パシフィックトロフィー代表)

 

「油の乗ったルーキー・プレーヤーが参入してくるシニア・カテゴリーは、毎年その厳しさを増します。幸運にも再び日本代表としてパシフィック・トロフィーに参戦できたことは大きな喜びでした。与えられた機会を充実したものにするべく、前回大会から今までの経験を活かせるよう心がけました。真剣勝負のラウンド中にもかかわらず、「このラウンドが永遠に続いてほしい」と、ペア戦のパートナーと語り合っていたほど幸せに感じる時間でした。朝焼けの中、チームが集合した1番ホールの空気感は今でも鮮明に記憶しています。」(大塚有尋選手)

 

「フットゴルフを始めて7年目、やっとの思いで掴み取った日本代表、めちゃくちゃ緊張するんだろうなと思ってアメリカに乗り込みましたが、パシフィックトロフィー前日の夜中に宿舎に到着し、睡眠は3時間位で早朝7時からゴルフ場というハードスケジュールだったことが、逆に緊張せずに済んだ要因の一つかなと後から振り返るとそう思いました。私はフォーサムで代表経験豊富な大塚選手とペアを組ませてもらいましたが、大塚選手とは2019年に遠征した中国で行われたペアマッチでペアを組んで一般選手と互角に戦えた良い印象があったのでその自信もリラックスに繋がりました。大会当日は天気も良く、わくわくする高揚感、適度な緊張感の中、リラックスしてプレーすることができました。実際にプレーが始まってからも二人でコミュニケーションをとりながら耐えて残り3ホールを残して、1対2、17Hで2対2に追いつき、最終ホールをイーブンで迎えるという接戦でした。そんな中、日本チームが一般、女子で4勝が決まり、9組ずつの対戦だったのであと1つ、5勝目をあげれば日本の勝利が決まるという情報が入りました。そういう場面でも冷静に熱く、最後の一打を決め切り、日本代表メンバー、松浦会長と喜びを分かち合いました。ほんとにしびれる戦いでしたが、18ホール終わってもこのままずっとプレーしたい、終わってほしくないと思うくらい心から真剣勝負を楽しむことができ、日本で応援してくれている人たちにやっと一つ恩返しができたそういう瞬間でもありました。また、海外選手との真剣勝負、コミュニケーションをほんとに久しぶりに肌で感じて、改めてフットゴルフって最高!という思いでした。」(根元央希選手/2022年パシフィックトロフィー代表)

 

「コロナ禍でワールドカップも中止になった後の3年ぶり4回目の日本代表に入りたいと思ってのツアーチャレンジをしていました。

しかし、当初のシニア選考の3位に入れず4位で終了した後の4位まで行かせていただけるという複雑な心境もありましたが、もちろん行くからには結果を出すことに切り替え個人的な準備や、強化合宿、強化試合など老害にならないように準備しました。

初めての相手でシニアカテゴリーとしては10歳年下の選手に、シングルマッチという戦い方を意識しながら自分の調子や相手選手の特徴やレベルを早めに確認し、同組の栗原選手ともしっかり情報共有しながらのラウンドなどなど、最初にリードされましたが結果に集中することができましたし、途中経過で日本代表が大きく勝ち越していたのがリラックスできたのかもしれません。

今まであまりシニアカテゴリーは団体戦に組み入れてもらえてなかったので楽しかったです。強化合宿や強化試合なども含めて今まで以上の準備や意識づけは皆出来ていたかと思いますし、次への課題と成長を意識していた選手は多かったと感じました。」(工藤誠司選手/2018年ワールドカップ出場)

 

「日本代表の一員として絶対に負けられないという気持ちが強くありました。ラウンド中もその気持ちを切らす事なく集中して戦う事が出来ました。チームジャパンには一体感があり、チームの勝利の為に全員が自分の出来る事をやりきった結果だと感じています。」(栗原祐二選手/2022年パシフィックトロフィー代表)

 

「渡航前のトレーニングマッチの存在が大きかったです。あの大敗があっての現地での勝利だったと思うので、パフォーマンスをしたのは実際に行ったメンバーですが、日本のフットゴルファーの勝利だと思っています。」(三浦尚子選手/2019年アジアカップ出場)

 

「フットゴルフを始めた時から日本代表になることをまず目標にしていたためとても嬉しかったです。パシフィックトロフィーでは初の日本代表としての国際試合で日本代表として戦い優勝できたことは自信にも繋がりました。

しかし、ここで満足せず更に突き詰めていかなければならないと課題も多く見えた時間になったと感じています。

日本から応援して下さっていた全ての仲間に感謝しています。」(山下えりい選手/2022年パシフィックトロフィー代表)

 

また、日本チームには選手とともに戦ったもう1人の存在が。

 

立花友佑選手。

 

立花選手はパシフィックトロフィーに選手としてではなくチームマネージャーとして帯同、本番のラウンドでは主に一番手の鈴木、川添ペアに付き、コースの情報や攻略方法を全体に共有し選手と一緒に戦いました。

日本チームにとって非常に大きな役割を果たしました。

 

「日米対抗戦ということで、絶対に負けたくないという思いが誰よりも強かったと思います。事前の練習試合で、サポートメンバーからの想いをしっかり受け取り、それを代表選手たちに還元できればという思いでした。代表選手たちの特性などを事前にしっかり理解し、怪我によりプレーできなかった1年間、試合や練習の見学をしてきた中で、少しでもフットゴルフに携わることができたことにも感謝し、それをマネジメントによって体現できたかなと思います。日本が勝利したときは、本当に嬉しかったですし、チームとしての一体感を感じました。日本の勝利のこの光景を見させていただいたこと、参加させていただいたことへの感謝が溢れました。」(立花友佑選手/2019年アジアカップ出場)

 

今や押しも押されもしない日本フットゴルフのエースである立花選手ですが、昨年負った膝の大怪我により1年間プレーできず悔しい思いをしてきました。

自分がこの舞台に選手として立ちたい、という思いを持ちながらも仲間の勝利のために一緒に戦った立花選手。実際にプレーする選手だけではなくまさに「チームジャパン」でつかみ取った勝利でした。

今回のパシフィックトロフィーは実に2年半ぶりの日本代表としての舞台となりました。

2015年の初代表「オリジナル6」に始まりワールドカップを始めとした様々な国際大会を経験してきた日本代表。そんな歴史を歩んできた先にある「今」を過ごした時間でした。

そんな「今」は選手の皆さんにとってどんな時間だったのでしょう。

お話を伺いました。

 

「これまで日本代表に3回選出して頂き、いい経験を積むことが出来ましたが、それ以上に悔しさが残るものでした。

特に2018年のモロッコワールドカップは、団体戦のみの選出だった為、個人戦に出場出来ない悔しさを今でも思い出します。」(三窪秀太選手)

 

「アジアカップで経験した代表とは違い、しっかり地に足をつけ、仲間との意思疎通、コースの特徴などを分析するなどワールドカップに繋げる時間にできたと思います。」(大塚高雅選手)

 

「フットゴルフを客観的にみる機会が今まではそれほどなかったので、とてもいい時間でした。今までは自分のプレーにフォーカスしていたので、様々な選手のプレーを見させていただき、非常に参考になりました。

私にとって必要な時間だったと思います。」(立花友佑選手)

 

「さくら市の応援やイベントなどもあり今まで以上に日の丸を意識せざるをえない時間が楽しかったです。

ただアメリカチームが1.5軍とも言われていましたし、終了後のUSオープンでの結果も次のステップに進むのに個人の成長として何をすればよいのか

考えさせられた良いタイミングだったのではないでしょうか?」(工藤誠司選手)

 

「日本では経験できない事が多いですね。

単純に海外でのラウンドや海外選手との試合。それ以外に1番は日の丸を背負って戦うと言うこと。結果を出す事、責任感を持つこと、それを意識しつつ日々プレーする事は僕にとって幸せな時間でした。」(川添祐介選手)

 

「自分のプレーを出来なかった事で、技術・メンタル等でまだまだ成長していかなければならないと感じた。国を背負って戦う責任を感じられたことは本当に貴重な経験だった。もっと強くなってまた戦いたいと思う。」(水谷唯人選手)

 

「日本代表になる事を目標の一つとして競技に参加してきたので最高の時間でした。また、今回はアメリカが相手でしたが、これから世界と戦っていく事を実感しました。」(栗原祐二選手)

 

 

「開催していただいた栃木県さくら市での代表合宿では、市長の表敬訪問、小学生の体験授業、公園のオープニングイベント、セブンハンドレッドでの強化練習と全てが今までに体験したことがないスペシャルで夢のような時間を過ごさせてもらい、その分、日本代表としての責任も大きいと強く感じました。渡米直前に鳳凰ゴルフ倶楽部で開催されたジャパンツアートップ選手との最終調整もとても貴重な時間で、真剣勝負してもらったことが大きなエールになり、なんとしてもアメリカに勝つんだと強く胸に刻み、その一勝は今後のフットゴルフの普及のためにも絶対必要だと思っていました。

個人としては、これまで経験したことはなかったのですが、日本代表に選ばれた今自分ができることは何だろうと考え、地元のタウンニュースや市役所に自ら電話をかけて取材や表敬訪問をさせていただきました。地元の市長さんや市役所職員さんの中に自分と同じ高校のOBの方が居たり、地元の知人、友人や地元を離れた友人がご両親から聞いたと応援の連絡をくれたりなど、様々な繋がりや反響があり、自分としての新しいことへのチャレンジ、そしてフットゴルフを多くの人に知ってもらうきっかけになりました。今までフットゴルフを幾度となくやめようかどうか悩んだことが全て吹っ切れて、これまで辞めずに頑張ってきて本当に良かったと思える最高の時間を過ごすことができました。先行き不安の中もがき続けたことが、振り返ると全てここに繋がっていたように思います。」(根元央希選手)

 

「ワールドカップへの意識が強くなりました。

このままではダメだと気付かされ、仕事を含め生活をフットゴルフ最優先にするキッカケになりました。

あとは現地で試合をした後に日本にいる前田(春香)選手と長電話したのが印象的です。

一番悔しい思いをした選手ですが、彼女はすでにワールドカップを見据えていて私からのフィードバックを聞いてくれて自分の思いも話してくれました。

次は絶対一緒にいこうって話もしてすごくいい時間でした。」(三浦尚子選手)

 

次のワールドカップとなる2023年アメリカ大会まで1年というところで開催された今回のパシフィックトロフィー。

それぞれの思いは違えどこの戦いを通して「過去」を振り返り、「今」を見つめ、「未来」を見据える姿は同じものだと言えるでしょう。

日本代表という舞台はやはり特別なものであり、そこでしか味わえない思いや経験があるのだと思います。

パシフィックトロフィーを戦った15名の選手(立花選手を含む)はこの経験を生かしてさらなる高みを目指すことでしょう。そしてそんな姿を見ながら代表に入ることができなかった選手は彼らに追いつき、追い越すことを目指して挑んでいきます。

さらには新しい選手が続々と現れました。

新しい選手たちはそうしたレベルの高い選手のプレーを身近に見ることができる環境の中で上位の選手を脅かすようなパフォーマンスを見せてくれています。

8月に幕を開けた2022-2023シーズンジャパンツアーは例年にない活気で溢れています。

彼らのプレーから目が離せません。

 

 

2022年がもうすぐ終わろうとしています。

 

前回まではワールドカップを中心に日本のフットゴルフの歴史、いわば「過去」について振り返ってきました。

ここからはそんな歴史を踏まえていろいろな方々のお話を基にフットゴルフの「今」について見ていきたいと思います。

 

2014年に日本フットゴルフ協会が設立して以来、これまでの様々な皆さまのご尽力によりフットゴルフは着実に広がりを見せており、多くの皆さまが身近に楽しめるようになってきています。

ひとつ、またひとつとフットゴルフを楽しめるゴルフ場が増え、楽しそうにボールを蹴る姿が毎日のように見られるようになりました。

2020年の地元開催である日本大会が新型コロナウィルスの世界的なまん延により(1年間の延期の末)中止となってしまった悲しい経験もありましたが、そこで歩みを止めることなくその広がりはさらに大きくなっています。

新型コロナウィルスの影響は残っているものの、日本で、世界でフットゴルフは日常を取り戻しつつあり、止まっていた時間は再び動き出しました。

次のフットゴルフワールドカップは来年2023年5月にアメリカで開催されることが決定しており、3月までのジャパンツアーの結果によりワールドカップ日本代表選手が決まる重要な戦いが繰り広げられています。

 

選手の皆さんはそんな「今」をどんな風に見つめフットゴルフに臨んでいるのか。

お話を伺いました。

 

「2022年8月から新たな挑戦が始まりました。

今シーズンの目標はW杯に出場し、前回のモロッコ大会の成績を上回ることです。しかし、今現在日本ランキングは下位に低迷しておりW杯出場圏外です。

このランキングこそ今の自分自身の実力だと再認識しています。ここ最近はジャパンツアーの参加者も増えて上位に入る事も簡単ではありません。

もう一度、日の丸を背負ってW杯の舞台でプレーできるように基礎から見つめ直して頑張りたいと思います。」(平野靖之選手/2018年ワールドカップ出場)

中央:平野靖之選手

「昨シーズンフットゴルフを始めてから代表落選を初めて経験しました。

自身のフットゴルフに対する思いやプレーで甘えがあり、フットゴルフに正面から向き合えていませんでした。

今シーズンは前シーズンの後悔を忘れずに日本代表を勝ち取り、今シーズン日本一を目指したいと思います。」(田中雄太選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

右:田中雄太選手 左は松浦新平日本フットゴルフ協会会長

「W杯を翌年に控えており、代表選考を含め勝負の年。3月の最終戦で1打足らず代表を逃してしまったので、必ず代表に入る!という強い思いを持って臨んでいる。」(高波瀬史人選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

右:高波瀬史人選手

「2022年8月から新シーズンとして日本代表選考会が始まり、国内での盛り上がりを感じています。

個人としては、日本代表選考も重要ですが、2022年5月に開催されたメジャー大会であるUSオープン(FIFG1000)から、2023年のワールドカップアメリカ大会までがシーズンだと思ってプレーしています。

アメリカで始まり、アメリカで世界トップで終わる!というプランで、チャンスがあれば、どんどん世界へチャレンジします。

といいながら10月に開催されるマレーシアオープン2022(FIFG500)に出場する機内で書いてますw

予定では、11月のオーストラリアオープン2022(FIFG500)にも出場するつもりでいます。

完全アウェイの環境で、トライ&エラーを繰り返しながら2023年ワールドカップまで研ぎ澄ましていきたいと考えています!」(安村翼選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

安村翼選手 ※写真選手提供

「やはり日の丸に拘り臨んでいます。ボールを蹴るというシンプルに自分を表現できるので。」(峯尾和延選手/2016年ワールドカップ出場)

右:峯尾和延選手

「2023年ワールドカップ日本代表選出を目指して。」(阿漕洋子選手/2018年ワールドカップ出場)

右:阿漕洋子選手

「広い目で見ると、日本と世界の差をとても感じることがある。それを発言すると批判の対象にもなるけど、それは日本フットゴルフ界を思ってのことであって、言い続けないといけないと思っています。なので僕なりにできることを真剣に考えています。

強豪国と比べれば、日本フットゴルフの歴史は浅いが、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ前へと歩みを進めています。失敗もあるでしょう。それでも10年、20年、30年、50年後に日本が強豪と呼ばれる国になるようチャレンジし続けなければならないと思っています。

日本開催のワールドカップが中止になり、一つ先に進むはずだった日本フットゴルフ界でしたが叶わぬ夢となりました。ですが変わらず、自分はフットゴルフの魅力を引き出すのが仕事。今はフットゴルフの魅力を最大限に引き出したいという目標があります。」

(冨沢和未選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

左:冨沢和未選手

「フットゴルフを始めて7年半になりますが、始めて良かったという思いです。お金も時間も掛かりますが、貴重な経験や思い出が沢山できました。色々と許す限り継続していきたい思いです。」(八谷紘希選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

八谷紘希選手

「今までと変わらず、一人でも多くの方にフットゴルフを知ってもらいたい想いを持ってプレーを続けています。」(新井晋選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)

左:新井晋選手 写真 選手提供

「私は、大病で一度はスポーツを諦めました。それが、フットゴルフと出会った事で、再び競技スポーツの世界へと戻ることができました。フットゴルフが誕生しなかったら、私のような、健常者と障がい者の狭間で揺れる人間が、再び競技スポーツの道へと返り咲く事はできなかったと思います。日本フットゴルフ協会が設立されて8年が経ちました。これから先、私のような非健常者がどんどんと選手として入り込んでくると思います。一人でも多くの選手がスポーツを諦める事のないよう、自分がロールモデルとなるつもりでこれからも頑張っていきたいと思っています。」(軍司和久選手/2018年ワールドカップ出場)

左:軍司和久選手

「2015年に初めてJAPANTOURに参戦して、今年でフットゴルフ7年目になります。当初は女性プレーヤーの参加もほとんどなく、参加して楽しむということだけでしだが、今は沢山女性プレーヤーも増えていて、とても嬉しいです。もっと沢山の方に体験していただけるように、微力ながら活動していけたらと思っています。」(山野香織選手/2018年・2019年アジアカップ出場)

山野香織選手

 

ワールドカップ出場を夢見ること、愛するフットゴルフをもっと世に広めていくこと。

フットゴルフはまだ新しいスポーツであり、選手の皆さんは自らがプレーをして競技者としての高みを目指す一方で、普及活動としてフットゴルフが「文化」として世界に広まり浸透していくための取組みを行ってきました。

フットゴルフを職業として、プロとして選べる人はまだほとんどおらずみんな普段はそれぞれ別の職業で収入を得ながら週末のわずかな時間に自費でフットゴルフに携わっています。

プレーできるゴルフ場が増えてきたとはいえ、みんなが身近な環境でプレーできる状況にはまだ遠く、ゴルフ場への移動の負担は大きなものとなっています。

 

それでもフットゴルフを続ける理由、それは

 

「フットゴルフが好きだから」

 

これ以外にはないと思います。

そんな彼らの思いがいつか報われる日が来るように。

フットゴルフが日本中のゴルフ場でプレーできる日が来るように。

ワールドカップで日本人選手が、日本チームが活躍し世界にその活躍が広まることもそんな夢へのステップなのかもしれません。

彼らの挑戦は続きます。

 

また、こんな言葉も。

「日本でフットゴルフがスタートして来期で10シーズン目を迎えます。色々な意味で想像通りの景色だと思っています。今後色々仕掛ける事で、想像を上回る展開を期待しております。」(松浦新平会長)

 

「フットゴルフが多くの世代に広がってきたことで、今までにない世界観を得た方々や、新しいチャレンジをする意欲を持った方々が増えてきたように思います。

笑ったり泣いたり悔しがったり進化させてみたりすることや、今まで交わることのなかった方との交流が増えることなど、フットゴルフが様々な方の人生のターニングポイントになってくれたら嬉しいなと思っています。」(瀧田知良さん/日本フットゴルフ協会オフィシャルトレーナー)

左:瀧田知良日本フットゴルフ協会オフィシャルトレーナー

フットゴルフは誰のものでもなくみんなのものです。

もちろんプレーをする人がいることで、増えることでその「楽しさ」は大きく広がっていきますが、それが一瞬だけの流行「ブーム」ではなく、人々の生活、人生に長年に渡り寄り添い定着し伝承されていく存在「文化」になるためにはプレーする人の存在が不可欠なのはもちろんのこと、いろいろな形で「応援する」立場の方々の存在も同じくらいに必要不可欠です。

これまでのフットゴルフの歩みと同様にフットゴルフの未来はたくさんの皆さまの愛情や力添えにより広がっていくことでしょう。

松浦会長の言葉にある「想像を上回る展開」、瀧田さんの言葉にある「今までにない世界観を得た方々や、新しいチャレンジをする意欲を持った方々」というのはフットゴルフがこれから「文化」になっていくための「楽しむ」「応援する」の両面に対する思いや期待なのかもしれません。

 

フットゴルフは皆さまの思いや力でもっと進化していくことでしょう。

そんな「未来」を夢見て。

 

さて、予定を変更して「未来」については次回の特別編でお伝えします。

選手の皆さんに聞いた2023年ワールドカップへの思い。

そして「あなたにとってフットゴルフワールドカップとは?」

熱い思いがここにあります。

次回特別編をどうぞお楽しみに!!

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